FEATURE 今月の特集

グローバル不動産TOPICS

アジアと欧米で大きく異なる『住環境への価値観』

私たち、リスト サザビーズ インターナショナル リアルティ(リストインターナショナルリアルティ㈱)は、国内・海外の不動産取引を手がけています。今回は、海外不動産購入の際に見逃してはいけない、「アジアと欧米の住環境への価値観の違い」について、国際不動産コンサルタントの市川隆久氏にお話を伺いました。

ラスベガス高級住宅街(2017.11撮影)

最近、不動産取引のグローバル化が急激に拡大しています。ひと昔前なら不動産は国内対象商品そのものであり、自国以外の不動産を買うのはその国に移住する時だったはずです。海外に移住する時もはじめから住宅を購入することはほとんどなく、その国や街を知ってから購入することが多いでしょう。実際そこに住み、暮らし、その国や街に慣れていくことで、環境や習慣などの違いを理解します。
しかし海外不動産投資において、多くの人は少ない情報をもとに海外不動産を購入します。行ったことはあるけれど、という程度でも、その国の人口の伸びや成長性などに期待して数字ベースで購入する人も多いのです。
人種も習慣も違う海外の不動産を購入する。そこには「こんなこと考えたことなかった!」という予想外のことも起きます。しかもそれは、相手の対応という次元を超えて、根本的に「住宅の価値」に関する部分でも起きるので、買う時はもちろん買った後でもなかなか気づきにくい、ということに注意が必要となります。
特に日本人がアジア以外の不動産を買う時には「アジア人と欧米人の住環境への価値観の違い」をまず頭で理解しておいたほうがよいといえるでしょう。

私は現在、ほぼ毎月海外に行って不動産を視察しています。細かいことをいうと、その国ごとに法律や経済状況など異なりますが、大きく見ると、まず「アジア」と「欧米」では住まいに関する価値観が大きく異なることに改めて気づきました。その違いとは何か? アジアと欧米を比較してみると、住まいの価値観やあり方は「対局」にあるといえます(図1)。
「新築 VS 中古」
「都心部 VS 近郊住宅街」
「混在 VS プライバシー」
「利便性 VS 治安」
私たち日本人はアジア人ですから、食べ物を含めてアジアのことは感覚的にわかります。しかし、欧米のことは住んだり付き合ったりしないと実感できず、日本的な価値観で判断すると根本的に間違えてしまいます。各所で行われている海外不動産セミナーでも、このような話題が議論の中で出ることがありますが、個々の住宅の話となると、あまり具体的に取り上げられることは少ないようです。

出典:総務省統計局刊行、総務省統計研修所編集「世界の統計2013」

アジアと欧米の違い、そもそもの背景は「人口密度の違い」と「国の発展時期の違い」および「気候の違い」によるものが大きいといえます。
アジアは世界で人口密度が最も高い地域です(図2)。人口一人あたりの国土は狭く、おのずと住宅の面積も狭くなります。隣人とも近い距離感で生活することになります。また、産業革命により早くから発展を遂げた欧米と、戦争や内紛などで発展が遅れたアジアとでは、住まい自体の仕様設備にも圧倒的な差があります。アジアが新築志向なのは、新築のほうが明らかに快適に暮らせるからです。日本でも30年前の住宅は不便なことも多く、その後急速に進化してきました。
さらにアジアの気候は高温多湿です。一方で、欧米は湿度が低い。雨量も少ない国が多く、雨が降っても傘をささない人が多いエリアです。さらにアジアの中でも日本は地震や台風などの自然災害のリスクも多く、災害発生とともに住宅の性能が進化してきた歴史もありますので、古い住宅よりも新しい住宅が安心だ、という評価があるのも当然といえます。ただし、ここ数年、国をあげて中古住宅の安心・安全な取引やリノベーション市場の活性化などを推進していることもあり、中古物件への意識も大きく変化しつつあるという側面は注目すべきでしょう。

「アジア人と欧米人の住環境への価値観」が大きく異なること。海外不動産投資を検討されている方は、このことも念頭に進めていただきたいものです。

国際不動産コンサルタント
市川隆久
(いちかわ たかひさ)
1961年生まれ。1984年株式会社リクルート入社後、株式会社リクルートコスモス(現コスモスイニシア)へ転籍。25年間の在籍中、不動産営業・マーケティング・商品企画に従事。その後、海外不動産の販売に従事し独立。世界各国の不動産を視察、販売・セミナー講師を務める。30年超のデベロッパー経験を活かし独自の不動産マーケティング理論を組み合わせた分析を得意とする。24ヵ国63都市の不動産を視察し現在も毎月海外視察を継続中。わかりやすい解説と不動産マーケットを知り尽くした深い視点からの語りが好評。宅地建物取引士。公認不動産コンサルティングマスター。東京外国語大学中国語学科卒業。